「希少な降り式井戸(蹲踞、蹲)」
青岸寺の庭園は非常に珍しい作庭のされ方をしていますが、その一つとして、庭園の脇ににある降り式の井戸があげられます。
もともと茶道のならわしで、客人が這いつくばるように身を低くして、手を清めたのが蹲の始まりです。実際この井戸で手を洗おうとすれば、身を屈め這いつくばらなければなりません。この形式の降り式井戸は全国的にもめずらしく、青岸寺をいれて数か所しか現存しておらず大変貴重です。庭園の景観の一部として造られたのか、直ぐ脇に茶室等があり利便性があったのかは、資料が乏しく不明ですが、庭園を観察する際の重要な要素になっています。
もう一つ重要な役割があり、普段庭園は枯山水庭園の様式をなしていますが、一定の雨量の雨が降ると苔の上に水が湧き出てくる池泉庭園の姿に変えます。これは井戸の水が一定量溜まると、庭園に水が流れる仕掛けが施されおり、一定以上の水位を超えないようになっています。また、溜まった水は西側から排出されます。これを作庭した香取氏の技法には驚かされるばかりです。興欣和尚の書、「築園記」では「功徳の玉の井」と評されています。
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