禅語紹介⑤/【水急不月流】withコロナ
゛水急不月流(みずきゅうにしてつきをながさず)゛
水面に写る月はどんな水の流れでも決して流されません。この場合の水の流れは時代や環境、感情の変化などです。水面に写る月は心を表しています。
今は世界中がコロナウイルスという激流によって不安の渦に流されています、経済、生活、未来、様々な先行きの見えない不安的要素は、平時にあった私たちの冷静な判断を失わせ、ネガティブな気持ちが湧き水のようにあふれ出すようになります。
ここで私たちが注意しなければならないのは、水面に写る月同様、私たちの心も実態があるものではないと理解する事です。本来はそこにないものです。ですからどんな水の流れでも水面の月は流される事はあり得ないのです。
では、なぜこんなにも心が不安によって誤った行動や言動をしてしまうのか。答えは私たちが生物であり、人間である。遺伝子的にも免れる事ができない事実だからです。私たちはこの世に産まれて死ぬまでこの実態のない心によって生涯一喜一憂して苦労していくのです。
「和尚さん、結局何が言いたいの?」と云われそうですね。
心は確かに実態がない。しかし、人は頭で考え行動します。凡そ過去の経験で物事を考えます。よく考えれば経験値の少ない幼い子供はどんな状況でも事態を飲み込めず、いつも通り過ごします。大人が不安そうだから伝染して不安になったりします。
人が経験値による価値観に基づき物事を判断してしまう以上、私たちが理解しておくべきことは、実態のない心というものを認知しておくことです。そして自分の心理状態を俯瞰的に観察して下さい。
負の連鎖が続く場合は一人一人が流されている自分の心に気づき、その心には実態がないのだと理解する事。そうすれば、貴方の行動原理に変化が起こると思います。今の貴方の
禅語は今の時代よりも波乱万丈の時代に名僧たちが残した言葉たちです。人間について深く参究しつづけた、言わば人間学のプロたちの研究結果です。どうぞ自分なりに咀嚼して理解していただくと、きっと私たちの生き方の助けになると思います。
水急不月流。水面の月は流されない。是非覚えておいてください。
住職 永島 匡宏 合掌
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