喫茶に添える一輪の花
皆さんごきげんよう。青岸寺住職の匡宏です。
青岸寺の喫茶をご利用されたことがある方はご存じ方と思いますが、青岸寺では喫茶を提供する際に必ず一凛の花や紅葉などを添えます。
その季節に咲く旬の花などを一凛必ず添えるわけですが、これには少し理由があります。
私は数年前までは住職をする傍ら外に働きに出ておりました。事務職で毎日同じことの繰り返しの日々。僧侶でありながら普通の生活を送る自身に葛藤がうまれ苦しんでいました。
私がいつも通り職場の机に腰を掛けると、机の上に一凛の花が活けてありました。
その花の名前も知りませんでしたが、一凛の美しい花に心が穏やかになりました。今まで一度として花に興味を持たなかった私でしたが、その名も知らない花に感動したのです。
この花を生けたのは職場の上司の女性でした。日頃から気遣いが行き渡り、職場の誰からも愛されている素敵な方です。その方が私の元気がない様子を心配して黙って一凛の花を添えてくれたのです。
その上司の気遣いを職場仲間から聞いて初めて私は、花のそのままの美しさを知り、人の思いやりを教えていただいたような気がしています。
花の美しさを知った私はそれから野花が咲いていたら足を止めて見るくせができました。以前の私にはまったくなかったことです。それから少しずつ私の世界は広がりを見せて、心の豊かさを感じたのです。あるがままの世界を素直に観察できる気になったのです。これは厳しい本山修行でも気づかないことでした。
あの時、私はなぜ一凛の花を美しく感じ、そこから癒されたのか。花がそうさせたのか、上司の優しさがそうさせたのか。
どちらにせよ一凛の花によって私は少なくても救われたのです。
仏教でも花はとても関係の深いものです。ここでは話をしませんが、それだけ花から人生を教えていただくことは多いのです。
2年前に仕事を辞めて、現在は住職としてお寺に在中しながら拝観者に喫茶を提供しています。
私はあの時救われた一凛の花を思い出し、喫茶をされる方に花を添えて提供しています。相変わらず花の知識はありませんので、何の花かはほとんどわかりません(笑)
いつもお手伝いしてくださる女性(上司にも負けない素晴らしい方)が花を摘んで持ってきてくれます。他にも青岸寺にはところどころにお花が活けてくれます。一人でも花の美しさに気づいてもらえるように。
そんなこんなで一凛の花を添えさせていただいております。少しでも皆さんの心が、あの時の私のように癒され救われていただけたら嬉しく思います。
今回は、なぜ青岸寺の喫茶には一凛の花が添えてあるのか?についてでした。
住職 永島 匡宏 合掌
この記事へのコメントはありません。