1. HOME
  2. ブログ
  3. 「正義の教室」飲茶/書籍紹介③

「正義の教室」飲茶/書籍紹介③

皆さんごきげんよう。

お寺の境内にある桜も散り、庭園の新緑は一層と青々しく春の深まりを感じさせてくれます。

しかし、季節は変わってもいまだ新型コロナウイルスは沈静化する兆しは見せずに、多くの方が心身共に疲れています。

また、ウクライナでは現在もロシアによる侵略により多くの非戦闘民間人が犠牲になっております。毎日の新聞、ニュース、SNSで凡そ信じがたい情報を連日目にして暗い気持ちになります。我々から見るとロシアは常軌を逸失しているようにかんじますが、ロシアにはロシアの正義があるのでしょう。どんな主義主張があろうと、人が人の人権や平和を侵害していい理由にはなりません。親や子供が殺されたウクライナの方は永遠にロシアを恨む事でしょう。戦争は終らない憎しみや争いの種が植えられております。

戦争だけではありません。自らの正義を振りかざした人が平気で人を攻撃します。これらの正義という名の侵略(征服衝動)はなぜ頻繁に繰り返されているのでしょうか。

今回はその「正義」にフォーカスした書籍「正義の教室」をご紹介いたします。

高校生の主人公正義君がそれぞれの正義の哲学を偶像化した女の子3名(功利主義・自由主義・直観主義)と共に正義の哲学を勉強し、真の正義に向き合っていくストーリーです。

哲学書でありながら小説になっていますので、非常に読みやいのが特徴です。

内容は殆ど伏せておきますが、この本の見方だけ説明いたします。この「正義の教室」は誰の正義を問うているのか。主人公の正義君?真の正義?違います。この書籍は読み手の正義を深く深く抉るように追及していきます。

他でもない「お前の正義とはなんだ」を読み手に考えさせる構成になっています。特に最後の正義君のとった常軌を逸した行動の真意を考えるだけでも楽しい一冊になっています。

小説を愉しみたい方には少し難しいかもしれません(ストーリーのように優しくありません)。哲学の知識を学びたい方には物足りないかもしれません。この書籍は自身の「正義」を理解するきっかけになります。

有事に私たちがどんな正義を主張するのか。自己を理解する事こそが今の時代に重要な事です。なぜならあなたも私も社会の構造の一部に過ぎない存在に既になったいるからです。一度、いや二、三周と読み返すと面白さが更に増していきます。是非、一度拝読してみて下さい。

それにしても、作者の飲茶氏の本が私は好きなのですが、彼の本には哲学を机上の空論で終わらせずに、新しい形を作ろうという意気込みを感じさせてくれます。

そして彼の「慈悲」のような思いやりのある(誰にでも理解できるように)書籍が多くあるのが非常に好感を持ちます。

住職 永島 匡宏 合掌

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

関連記事